MSX


初めてパソコンに興味を持ったのは、すがやみつる氏著「こんにちはマイコン」(1982年発刊)を読んだ時だと思う。

当時コロコロコミックで大人気だった漫画「ゲームセンターあらし」の主人公がマイコンに触れて悪戦苦闘するも、持ち前の吸収力の高さで次第に習得していく過程を見ながらマイコンについて学べるという学習書のような漫画でした。

なるほど、マイコンというものはゲームも出来るし学習も出来るし日常生活で役立つものだ、これからはマイコンの時代なんだと当時小学生ながら思ったものです。




こんにちはマイコン
原寸大キーボード写真もオマケで付いて、キー配列を覚えたものです




マイコン欲しいぞ!



となれば、マイコンが欲しくてたまらなくなります。

書で描かれていたマイコンは「NEC PC-6001」

”パピコン”の愛称で親しまれた入門機でした。





PC-6001
NEC PC-6001



入門機らしく性能的には最低ラインのものでしたが、初心者向けプログラミング言語「BASIC」を学ぶにはこれで十分。

何よりマイコンのマの字も知らないわたしにとっては、まだ馴染みがないキーがずらりと並んだ筐体だけでも未来感がゾクゾク伝わり興奮しきり。


「おとん、これ買うて!」





当時はまだ高価なマイコン



とはいえ、80年代前半はまだまだマイコンは高価な品でした。

この機種は入門用で比較的安価ながらも本体だけで「89,800円」

これにディスプレイをセットすれば15万円ほどになります。

ちなみに同じNEC製でランクが上の機種、例えばPC-8001シリーズならセットで25万円超、PC-8801シリーズならセットで35万円超、16ビット機種PC-9801シリーズに至っては50万円に達するなど、今のパソコンと比べてそれほど出来ることが多くなかった割には非常に高価でした。

当然、最安価のPC-6001と言えど小学生相手においそれと買い与えられる価格ではありません。 


「アホか」と、おとんに言われたかどうかは覚えていませんが、あえなく購入交渉は撃沈となりましたとさ・・・。




 

救世主、MSX!



だがしかし!
1983年、そんな落胆するわたしに救世主となるパソコンが登場します!


その名も「MSX」!


正確には「MSX」という名の機種ではなく、パソコンの統一規格になります。

天下のマイクロソフトとアスキーがタッグを組み、当時機種ごとに使用できるソフトが異なっていた状況を打破すべく開発されました。

のちに「Windows」が世間一般に浸透しますが、まあそれとは異なるものの、統一規格という結果としては似たようなものと思っていただいて差し支えないかと思います。
 

なにしろこのMSX。 当時高価であったマイコンをより身近なものにしようと、ホビーユースに的を絞ったライト仕様でした。

これからを担う子ども達の学習用途として開発された側面もあり、実際今のプログラマーやエンジニアの方で、初めて触れたパソコンがMSXだった、という方も多いはず。

それだけに性能的には劣るものの、なんといっても安いのが特徴。

最安価で話題になった「カシオPV-7」はなんと驚きの「29,800円」!

これなら買いやすい価格ですよね。

しかもこのMSX。本体が安いだけではなく、普通のテレビに繋げられるので別途ディスプレイを購入する必要がありません!

このディスプレイの価格が非常にネックで、前述のPC-6001を購入交渉する際も、本体価格89,800円だけならまだ親も考慮の余地があったようですが、セットで15万円となると即座にダメだしされましたからね。

まあ家庭用テレビに表示させるとボヤけた映りになりますが、まずは未知の機械、マイコンを手に入れることが先決ですから贅沢は言ってられません。


「おとん、これ買うて!」take2



 

我が家にマイコンがキターーー!!



というわけで、交渉の末なんとか買って貰うことに成功♪

わたしの生涯で初めて手に入れたマイコンが「ソニーHB-75」!

当時松田聖子さん出演のCMで、「人々のヒットビット」とプロモーションされていた機種です。誰も知らないか・・・。





HB-75
 別に聖子ちゃんファンだったわけではありませんが・・・



本体価格 69,800円はPC-6001に比べると安かったですが、小学生への贈り物としてはなかなか高価。ありがとうおとん。

よっしゃ、これでプログラミング覚えて将来はコンピューター関係の最先端の仕事に就くぞ!!


・・・とは建前で、本音はゲームをしたかったからです(笑)


なにせMSXといえば、カートリッジ式で手軽に豊富なゲームが楽しめます♪

1983年当時といえば任天堂のファミコンも丁度発売されたばかりでしたが、”ゲーム専用機”に関しては買って貰えそうもない状況でしたので、うまくごまかしてこちらを選んだ経緯もありまして。

まあ、実際ゲームだけでなくプログラミング他、マイコンならではの用途にも興味がありましたのでこれはこれで良かったのですが・・・。





MSXのある生活



そんなMSXと過ごす日々は楽しいものでした。


初めて触れるキーボードの文字の配列に悪戦苦闘しながらも、次第にタイピングが上達していく達成感。

「マイコンBASICマガジン」という、読者投稿のプログラムが掲載された雑誌を熟読しては、プログラミング言語BASICを修得していく満足感。

たまの息抜きにプレイするゲームの興奮や対戦で盛り上がる高揚感。


すべてがわたしの生活を一変するほど魅力的な要素に溢れていました。
 
と同時に、マイコンがわたしたちの生活にもたらすであろう様々な変化の訪れに興奮を隠しきれません。


いいぞMSX! いけいけMSX! ボクらの味方MSX!!



しかし、そんな蜜月の生活を数年続ける中、”あの”ファミコンがMSXユーザーのプライドを打ち砕きに来ます!



わたしのMSXを見て、友人が悪びれるまでもなく放った言葉。



「なにそれ?おもちゃ?」




見劣りするMSX!



うすうすは感じていました・・・。

同じタイトルのゲームをファミコン版と比べてみると、MSX版の方が見た目ショボいのは。


例えば、前回記事にも取り上げました「グラディウス」で比較すると・・・



MSX
MSX版


FC
ファミコン版


モアイの色はともかく、自機”ビッグバイパー”や”オプション”のディテールを見ると出来の違いは明白です。

これはゲームで自分のキャラや敵キャラを動かす際、”スプライト”という機能を使うのですが、MSXは1色しか使えないのに対して、ファミコンは3色使えます。

たかが2色の違いですが、これが見栄えの点では雲泥の差となって表れるんですね。

とにかくMSXのゲームではどんなキャラクターも単色。

せいぜい目や口の部分をくり抜いて表情を作ることしか出来ません。

ファミコン出始めのときは気にならなかったのですが、普及するにつれ「あれ?ファミコンの方がキレイじゃない!?」と焦りを感じはじめていました。

その焦りは次第に大きな劣等感となって、我々MSXユーザーを悩ませます。



「ファミコンなんてゲーム機に負けてる!?」



疑いようのない事実でしたが、ファミコン数倍の値段のMSXユーザーとしては受け入れ難いものです。

ファミコンユーザーの友人から、その画面のショボさから”おもちゃ”呼ばわりされても致し方ありません。



「いや、こっちはマイコンだし!」



他方、マイコン(そろそろ”パソコン”が一般名称になりつつある頃ですが)に目を向ければ、「NEC PC-8801」、「富士通 FM-7」、「シャープ X1」のいわゆる8ビット機御三家が台頭し始めた頃。

パソコンならではの緻密なグラフィック機能を生かしたアドベンチャーゲームやロールプレイングゲームを見ると、MSXはますます相手になりません。


ゲーム機にも負け、パソコンとしてもお話にならない性能・・・。


いつしか、MSXユーザーであることを恥ずかしがることもありました。



「どうせMSXですよ」





しかーし!!

そう思ったわたしは一念発起!!

今に見てろおお!!!








・・・さっさとファミコンとPC-88に乗り換えましたとさ、めでたしめでたし♪

(・_・)ヾ(^o^;) オイオイ



とはいえ、今でも愛好家がいるほどMSXはパソコン史に於いて意義のある機種でした。

わたしもこの機種のおかげで現在のオタ生活をつつがなく送っている次第でございますので、果たしていいやら悪いやら・・・。





 
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